素晴らしき洞窟探検の世界

第3回 死にかけても、洞窟に潜る。でも、Gが出たら即撤退!
『素晴らしき洞窟探検の世界』(ちくま新書)刊行記念

『素晴らしき洞窟探検の世界』(吉田勝次著、ちくま新書、2017年10月)の刊行を記念し、著者で洞窟探検家の吉田勝次さんと俳優の石丸謙二郎さんの対談を公開します。 今回は、吉田さんの日常生活や探険家としての未来にも踏み込みます。死にかけても洞窟に行き続ける「洞窟病」にかかった吉田さんの熱さが伝わる最終回です。

死にそうになった数の分だけ、危険に敏感になった
石丸 洞窟は危険がたくさんあるから、かなり用心深いと思うんだけど。危険に対して備えるのって、普段からしてる? 例えば、交差点で待つときに、ふつうの人が立つところには立たないでしょう。
吉田 店に入る時も出口が見えて、全体が見渡せるところに座ります。
石丸 じゃあ、歩道を歩く時は?
吉田 ビルに近い、ギリギリのところを歩きますね。
石丸 僕も同じだな。
吉田 物が落ちる時って、すこし斜めにいくから、ビルのギリギリ下は大丈夫。その話を人にしても「ふーん」って反応だけど(笑)。
石丸 車を運転する時は?
吉田 カーブになった瞬間に、何台か先まで動きを見ますね。あと後ろも、追突されるんじゃないかと思って気をつけます。トラックが後ろについたら、必ず譲る。
石丸 そういう危険回避能力、なんで培われたと思う?
吉田 死にそうになった数の分だけ、危険に敏感になったんです。
石丸 小さい頃から、そんな機会はあったの?
吉田 じいさんが村会議員で、無縁仏の墓を作ってたような人なんですけど、そこに学校の休みごとに遊びに行ってたんです。それで山で迷ったり、ガケから落ちたりは、子供の頃からしてましたね。あと、じいさんが使ってた空気を入れるタイプのベッドを持ち出して、それで川を何十キロも下ったりはしてたかな(笑)。
石丸 現代は、危ないことは、まずやらせない。だから、みんな色々とやったことがなくて、危ないことがわからない。それで、ぼんやりしてますよね。だから、僕からすると、工事現場とか、地下道は怖い。逆に自然の中の洞窟だと、怖くない。
吉田 僕も、高架の下の道を走るのが嫌です。地震が起きて倒れて来そうだし。石丸さんと話してみて、「僕みたいに思う人が他にもいるんだ」と思いましたよ。
石丸 俳優をしていると、「そういうことを気にしていると大した奴にならねえよ」なんて言われるんだけど、「なら、ならなくていいよ」と(笑)。山なんかでも、「どんな危険なところでも平気だ」という人がいるけど、そういう人を連れていく方が怖い。ある程度怖がって、ちゃんと準備をしている人の方が安心です。

左:吉田勝次、右:石丸謙二郎、写真:畠山泰英(科学バー/キウイラボ)

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勝次, 吉田

素晴らしき洞窟探検の世界 (ちくま新書)

筑摩書房

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