地球上には、世界の全人口にあたる78億人のお腹を満たすのに十分な食料が生産されているにもかかわらず、新型コロナウイルスが世界中に広がる前で、すでに6億9000万人もの人が飢えています。なぜ飢餓や飢饉が起こるのでしょう。この飢餓人口の数字は、2020年からのコロナ禍でさらに1億人以上増えたと推察されています。
『人口論』という本を書いたマルサスは、人口が増え、食料の生産が追いつかずに、飢餓が増えると主張しました。食料供給の不足が飢餓の要因だと言ったのです。
これに対し、ノーベル経済学賞を受賞したインドの経済学者、アマルティア・センは、飢餓の要因は食料不足だけではなく、食料を入手する権利や能力がないためだと指摘しました。世の中の不平等が飢餓をもたらしているというのです。物理的に食料が足りていたとしても、流通している食料を手に入れるためにはお金が必要です。お金のない貧しい人は食料を手に入れられないのです。
紛争が起きている地域では、人々は、食料のあるところまで行くことができません。たとえ食料が十分にあったとしても、世界に貧困や紛争がある限り、飢餓はなくならないのです。SDGsは、貧困や紛争をなくすことを目指していますが、解決するのがとても難しい、大きな問題です。
では、私たちには何もできないのでしょうか? そんなことはありません。そのひとつが食品ロスを減らすことです。食べられるのに捨てられる食品は、世界の食料生産量の3分の1(13億トン)にものぼります。
日本では、年間600万トンの食品ロスを出しています。これは、東京都民1400万人が1年間に食べている量に匹敵すると言われています。
2020年10月にノーベル平和賞を受賞した国連WFP(国際連合世界食糧計画)は、世界で食料を必要とする人たちへ、年間420万トンの食料を援助しています。ということは、日本では、世界の食料援助量の1・4倍もの食料を捨てているのです。日本の食料自給率は37パーセント。自国で自給できないので、世界中の国から、たくさんのお金とエネルギーをかけて輸入しています。運んだ食品の重さと距離を掛け合わせて算出する「フードマイレージ」の値も、先進諸国の2~3倍に相当します。それだけ経済や環境に負担をかけておきながら、結局は捨てているというのです。
「捨てる」と一口に言っても、捨てられた食べ物は一瞬にして消えるわけではありません。日本では、焼却処分することがほとんどです。焼却費用もかかるし、二酸化炭素を排出するので環境への負荷もかかります。日本のごみ焼却率は約80 パーセント。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも、最もごみ焼却率が高いのです。
日本以外の国では、食べ物のごみを燃やさずに埋め立てる場合もあります。そうすると、二酸化炭素よりも温室効果が25倍以上も高いと言われるメタンガスが発生します。燃やしても埋め立てても、いずれにしても環境に負担をかけてしまうのです。環境に負荷がかかれば、農産物や魚、家か畜ちくが育ちにくくなり、食べ物が手に入りにくくなってしまいます。
2050年には世界の人口が98億人を超えると予測されています。人口が増え、食料が不足すれば、今よりますます飢餓がひどくなる可能性があります。
この問題を解決するためには、この本を読んでいるあなたが行動しなければなりません。びっくりするかもしれないけれど、この問題の主人公はあなたなのです。あなたの行動で何を変えられるか、何を変えられないかを、この本を通して考えてほしいのです。一緒にSDGs時代にふさわしい生き方を目指していきましょう。