【季節・秋 分類・生活(その他)】
栞(しおり)
傍題 栞紐
「栞っていうとまず何を想像する?」と読書好きの友人にメッセージを送ると、「たとえば岩波文庫の栞は「『広辞苑』を散歩する」、講談社文芸文庫は「魂を衝つ人生の光芒!」、ちょっと前のちくま文庫の「で、あなたは読んだの?」。そういうのを書いておくと、ちょっとわかってる人っぽく見えるんじゃない?」と、返信が来た。この連載「ネオ歳時記」のために聞いたことが、完全にバレている。たしかに、文庫を買うともらえる栞は、ペラペラだが案外かわいかったりする。あの栞、読み終わったら捨てちゃいますか? それとも取っておきますか?
私はといえば、どうしたか覚えていない。……実は私、今までの人生で、栞を使ったおぼえがほとんどない。基本的に本は読まない上(読めよ)、「読んでいる途中の本が1冊もない状態」でないと気が済まない。読み出したらそのまま最後まで読み切らないと、気が狂いそうになる。よって、長いものは読めず、栞もほとんど使わない。知り合いに、15冊くらいの本を並行して読むという人がいるが、気が知れないなぁ。自分のなかにそんなにたくさんの物語を走らせて、胸に穴が開いてしまわないんでしょうか。ちなみにここ数年、書店で買った文庫本は歳時記のみ。
でも、本棚に立てた本から栞紐が尻尾のように出ているのは結構好きだ。前述の理由により、うちにある本の多くはインテリアとしての役割しか果たしていないので、棚に差す本のつくりにはこだわる。気に入っているのは和田ラヂヲさんの漫画『最近わかったこと』(KKベストセラーズ)で、グレーのハードカバーにピンクのカバー、栞紐はなんと、黄色・水色・ピンクの3本。なかでも水色がよく光り、タイトルまわりの銀の箔押しの模様と呼応してかわいい。持っている本のなかでも一番よく読み返すので、抜き差しすると栞のはね方が変わるのもいい。中身はむちゃくちゃシュールな4コマ漫画ですが。
で、なぜ栞が秋かといえば、そりゃもう「読書の秋」だから。読書といえば、「灯火(とうか)親しむ」(灯火のもとで読書などをすること)も秋の季語。
〈例句〉
押花のいつの花なる栞かも 佐藤文香
指の毛の伸びるはやさよ栞紐